2024年11月30日から、日本人の中国滞在が査証免除(ビザフリー)となりました。近場ですので、観光や出張で、これから中国を初めて訪れる方も多いかと思います。中国はなんとなく怖いイメージが強かったですが、きちんと準備をすれば便利に旅行が出来ます。私自身、2024年に1年の半分を中国で過ごした経験をもとに、短期滞在向けの実践的な準備や注意点をまとめましたので、参考に頂いて楽しく安全なご旅行にしていただければと思います。
大前提として理解してほしいこと
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中国は旅行先としては少し特殊な旅行先となることは間違いないと思いますが、一方で、海外に行く際には治安情報や文化的な留意点を調べてから出かけるというのはごく普通のことだと思います。その点で言えば、他の国に出かけるのと大きくは違いませんし、日本人としては漢字圏ですので他の外国人よりも多くが理解しやすい、出かけやすい旅行先だとも思います。
一方で、政治的な問題やなにかのきっかけで突然状況が変わることも予想されますので、そのような事も念頭に置きつつ準備を進めてください。
中国旅行の基礎知識
まず大前提として以下の様な「常識」は理解しておいてください。
中国のインターネット事情
- 中国のインターネットではグレートファイヤーウォールと呼ばれるネットの検閲があるので、中国国外のサービスやサイトに自由にアクセスできるとは限りません。国外のサービスやサイトに自由にアクセスできるとは限りません。特に、Google関連サービス(Google Map、Gmail、Google翻訳など)やLINEは利用できません。
- 基本的に通信は全て監視されているものと心得ましょう。
- VPNの利用は原則として規制されていますが、実際には多くの外国人が私的に利用しています。基本的には政府に害がない範囲でお目こぼししてもらっているという理解を持って、適度に使いましょう。ただし、急な接続トラブルが起こる可能性もあるため、バックアップ手段を考えておくことも必要です。
- 逆に言えば、中国政府が嫌がりそうなことは調べたり、発信したり(これは絶対ダメ)することはやめましょう。もちろん、無料で10年くらい中国に残りたい方は別ですが。
- このような事情から、中国のインターネット関連サービスはさまざまな独自進化していることが多いです。分かればとても便利ですが、中国の携帯番号がないと登録できないサービスも多いです。
- 気になる方は、中国で使う携帯は別に用意して、他の携帯は中国国内では電源を入れないと言う選択肢もあります(自分はもう諦めましたが、中国のSIMカードは単純に枚数の問題もありますが、普段使うのとは別の携帯に入れいています)
治安面
- 特に大都市の一般治安は世界的に見てもかなり安全だと思われます。当然、観光地や人混みでのスリや置き引きなどに気をつける必要はあると思いますが、主に上海で過ごしている私としては、ほぼ日本と同じ様な感覚です(最近日本もかなり物騒ですが)。
- ただし、地方部や国境地域、自治区などは例外だと思います。これらの地域に行かれる方は別途しっかりリサーチしてください。
- 一般的な留意事項に加え、歴史的な経緯などから、反日感情が高まりやすい日などあります。これらの情報は在中国日本大使館のページや外務省のたびレジに登録することで簡単に取得できますので、最低限の情報として確認するようにしましょう。
- 監視カメラが多くなってからと言われていますが、一般的な治安はかなりいいと思います。逆にいうとカメラで監視してもらっていないところに行く時(地方部や路地など)は少し気をつけた方がいいかもしれません。
- これは自分も意外でしたが、写真撮影等については、意外と自由にとっても大丈夫です。ただ、軍事施設やインフラ関係設備、警察関連などの撮影はしない方が良いでしょう(世界の常識)。日本国内の米軍施設同様、本当に撮影禁止の場合はその旨が書かれています。漢字がわかると思うので、「禁止」なんて文字をみたら、周りの様子を確認して大人しくしましょう。「请勿拍照」と書かれているケースもあるかもです。ほとんどの日本人は、だまっていれば外国人には見えないのも特権です。
- 外国人観光客をターゲットにしたぼったくりや昏睡事件などはどこの国でもあり得ます。知らない人にはついていかないようにしましょう。
日常生活・お支払い関係
- 日常生活で現金はほとんど見たことがありません。ということは現金で払っても受け付けてはもらえるかもしれませんが、お釣りがいるようなケースではだいぶ手間取ることが想定されます。
- これは行く場所にもよると思いますが、上海のはずれでも、ホテルのチェックインでも英語が通じないという感じです。この1年ほどで外国人の数もかなり増えてきたので、少しずつ外国人対応が改善しつつあると思いますが、基本的に英語は通じないと心得ましょう。
- リマインダーですが、そのままではGoogle翻訳は使えませんよ!
- クレジットカードも原則として「そのままでは」使えません。JCBやAMEXとなるとなおさらです。街中でクレジットカードが使えるのは基本的にはホテルと高級レストランくらいでしょう。クレジットカードが使える場合でも3%程度の手数料を追加徴収されるのが一般的です。
- たとえばレストランなどでメニューや注文はQRコードで読み取って行うというケースが多くありますが、この際、通常のカメラアプリで読み込んでも機能しません。Wechatから読み込む必要があります。これは初中国の時、理解できるまで数時間かかり、かなり困惑しました。もちろんインターネット接続も必要です。
- トイレ事情についてですが、よく聞くドアのない開放的なトイレは流石に都市部では見ないと思います。ショッピングモールやオシャレなお店では日本と遜色のないトイレが増えてきている一方で、郊外や公園などでは日本の昭和終わり頃のようなスペックのトイレにも遭遇します。概して清掃状況は悪くないですが、トイレ内の喫煙や携帯の長時間利用などはまま目撃します。また、日本人的に気をつけた方が良いのは、トイレットペーパーがない場合や、トイレの入り口に一つだけ設置されていて、自分でトイレットペーパーを個室に持ち込まないといけないケースがあることと、紙をトイレに流してはいけない場合がまだ多いことです。もし大きめのゴミ箱が個室に設置されていたり、汚物入れに大量のトイレットペーパーが入れられている場合は紙は流せませんので、汚物入れに捨てて下さい。最悪溢れてきますよ!
絶対に対応が必要なこと
まずはパスポートの有効期限とビザの必要性
冒頭にも書きましたが、2024年11月30日から、日本人の「一般的な」中国滞在に関してはビザをとらなくても30日まで滞在が出来るようになりました。ここで言う一般的というのは、「商業・貿易、観光、親族訪問、交流・訪問、トランジット(乗り換え)を目的とする」滞在になります。
ただし、商業・貿易というのは一般的には会議や打ち合わせなどのための訪問ですので、例えば製造業や設備業者の方が工場などで作業や研修を行う場合や、撮影やステージでの公演、ボランティア活動などを行う際にはM、Z、Fなどのビザが必要になる場合が在ります。不安な方はお近くの中国ビザセンターにお問い合わせ頂くのが良いと思います。もちろん、違反が見つかれば不法滞在になりますので十分ご注意ください。
一般的な注意事項は 在中国日本大使館でも掲載されています:
パスポートの顔写真ページは念の為
こんな情報、お役に立たないことを願いますが、パスポートの顔写真ページは念の為、クラウドからアクセスできるところに写真、あるいは出来ればスキャンデータで保存しておくことをお勧めします。クラウドなんてよく分からない、という方は写真を撮ってご家族などに送っておくだけでも構いません。
この情報、万が一パスポートを紛失した場合に、警察や大使館・領事館での手続きに非常に役立ちます。ちなみに筆者は心配性なのでパスポートととは別に、戸籍謄本も持ち歩いています。
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お支払い関係:WeChatとAlipayの設定
現地の方が朝から晩まで、フルアテンドで面倒を見てくれるというVIP待遇の方を除いては、最低限下記の準備が必要だと思います。
- WeChat(中国語ではウェイシン、微信 Wēixìn)は、中国国内で最も使われているチャットアプリ、日本のLINEに相当します。チャットだけでなく、支払手段としても必須のアプリです。突然LINEが使えなくなる場合もあるため、現地での連絡手段としてインストール重要度ナンバーワンです。
- 決済アプリの「Alipay(ツーフーバオ、支付宝 Zhīfùbǎo)」も日常の支払いで大変有用です。WeChatが突然支払に使えなくなるケースもあるので、バックアップとしてインストールすることをつよくおすすめします。
- どちらも日本のクレジットカードと紐づけて、支払いができるようにもなります。自分的にはWeChatの方がAMEXが登録できたり、当初の段階で支払いを突然拒絶されたりすることが少なかったので、利用頻度が高いです。
- ちなみにJCBはAlipayでもWechatでも自分は登録できています。
- Alipayでは単純な支払いのほか、地下鉄やバスに乗ったりもできます(QRコードで改札を通ります)
- 詳しい登録方法や使い方はおそらく他のサイトにも多くあると思うので割愛します。
- Wechatは簡単なやり取りであれば、テキストを長押しすると翻訳もできます(たぶん簡単なやり取りは漢字で理解できると思います)
Google以外のサービスの準備
中長期の出張や、繰り返し中国に来る可能性がある方は、別途中国の類似アプリをインストールしていただく方がいいと思いますが、短期間の出張であれば、なんとか違うアプリで乗り切りましょう。
下記に示す海外経由のポータブルWiFiや、VPNなどを使用することで、Googleサービスなども使えるようにはできますが、急に電池が切れてしまったり、電波が悪かったりと不意に使えなくなるケースもあるので、バックアップとして下記も準備することをお勧めします。
- Google Map: 自分はApple Mapで乗り切りました。Androidは何があるんだろう。何かアイディアがあれば教えてください。中国で自分で移動を調べないといけない方は、百度(ばいどぅ)MAP(百度地图)をインストールしていくのが良いでしょう。本当は高徳地図というのがおすすめですが、中国携帯番号がないと登録できません。
- Google翻訳:DeepLがすでに入っている方はそれで良いと思います。制度で言うと百度翻訳をブックマークORインストールしておくのが良いかもしれません。
- Gmail: これはなす術がないですね。緊急連絡はショートメール(SMS)してもらうのがよいと思います。Outlook、Yahooメールは使えます。
- Google検索:Yahoo検索もできません(トップページは繋がります)。自分の場合はbing.comを使用しました。中国関連のことであればbaidu.comも良いと思います。
- GooglePlayストア:これ、盲点だと思いますが、アプリのインストールもできなくなるので、アンドロイドユーザーはご注意ください。
他にも普通には使えないアプリ・サービス
LINE、Instagram、twitter、Google、Facebook、YouTube、Yahoo検索、DropBox
その他、日本側がセキュリティ上、海外からの接続を禁止しているサービスも多数あります。
宿泊登記
一般の方には該当しないと思いますが、ホテルではなく、友達や知り合いの家に泊まる場合は最寄りの警察署での宿泊登記が義務付けられています。ついたらすぐ、ホストの方に相談してパスポート持参で警察署にいってください。24時間以内というルールですが、深夜着でない限り、夜になる前に出頭するのが無難です。
中华人民共和国出境入境管理法 – 第三十九条第二款规定,外国人在旅馆以外的其他住所居住或者住宿的,应当在入住后二十四小时内由本人或者留宿人,向居住地的公安机关办理登记
https://www.nia.gov.cn/Enquiry/publish/showQuestion.jsp?MZ=Zx2lsn37bUOgw9G%2Fs%2BDAZg%3D%3D
その他、一般的な海外旅行の必要事項
海外旅行保険や、最低限の現金等は念のため用意していただくのが良いでしょう。
また中国でミーティングなどではなく、業務上、実際手を動かして作業をしたりする場合はビザ免除の対象外です。また業務用の商品や部品を運ぶ場合には日本側でも中国側でも手続きが必要なケースもあります。必要なビザや手続きを漏らさないように気をつけましょう。
準備した方が良いもの
- 変換プラグ: 一部のサイトでは日本と同じコンセント形状と書かれていたりもしますが、自分の経験ではOタイプのプラグの方が多いです。高級ホテルや国際対応した会議室中心の予定の方は大丈夫かと思いますが、サスケのようなコンパクトな変換アダプタがあると安心です。ちなみに電圧は220Vですので、念の為、お使いの機器が対応しているか確認はしてください(充電器のラベルなどを見てINPUT 100-240Vなどと書かれていれば大丈夫です)
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- 中国で使えるポータブルWiFi:Global WiFiやXXのWifiなど、多くのサービスがあると思いますが、上記のような事情で海外経由で接続できる中国仕様のポータブルWiFIサービスがないと、家族とLineで連絡を取ったりするにも困ることになります。
- 香港のSIMカード:別にポータブルWIFIを持ち歩くのが面倒な場合は、香港のSIMカードでもほぼ大丈夫です。ESIMもあるので、必要に応じて選んでください。
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- VPN: 前述のように、中国からは接続が規制されていなくても、日本側のセキュリティ対策でアクセスが規制されているサービスも多くあります。自分は下記のNordVPNというVPNを活用しています。下記のバナーから登録頂けると、30日以内無料キャンセル可能、かつ1年契約で3ヶ月分が無料でお試し頂けます。VPNは日本などでカフェやホテルの公衆WiFIを使うときのセキュリティ対策にも利用できるのでお勧めです。
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- タクシーアプリ:滴滴(Didi)が有名ですが、日本に比べると破格に車移動ができます。タクシーアプリとは言うものの、一般の人が自家用車で送迎してくれるケースが圧倒的です。これも調べれば登録や使い方を書いたサイトがあると思いますので詳細は割愛します。ちなみに一度外国の電話番号で登録すると、そのあと中国の番号に変更することはできないのでご注意ください。
- 铁路12306 (アプリ):中国の新幹線「高鉄」を予約できるアプリです。都市間移動が予定される場合には必須アプリだと思います。
- ウェットティッシュ: まだまだ「げっ」と思うトイレに遭遇したり、中華料理でお肉や魚の骨など、手で掴んで食べた方が早いケースも多くあり、ウェットティッシュが活躍します。
- ポケットティッシュ: これも言わずもがな、ですね。
- マスク: まだまだ咳エチケットが必要なケースも多いです。日数分程度は持ち歩いた方が安心です。
- 胃腸薬: 辛い料理や飲酒の機会も多いのが中国です。また、中華料理は油を使ったものが多く、安い店だと油を使いまわしているケースもあります。いろいろありますが、日本より胃腸薬のお世話になるケースが多いと思います。今あげたような食事内容に不安がある方は、念のためポカリの粉や、レトルトやアルファ米のおかゆも忍ばせておくと安心かもしれません。
- モバイルバッテリー: 中国では支払い、道案内、翻訳、連絡などなど、携帯電話が命綱です。場合によってはモバイルバッテリーを持ち歩く方が良いかもしれません。なお、一般的に20000mAを超える容量のものは機内持ち込みも預け入れも禁止で廃棄処分になりますのでご注意ください。また、中国系のキャリアでは機内でのモバイルバッテリーの使用は禁止です。
- 最低限の中国語:こんにちは、ありがとう、ごめんなさい、領収書、私は外国人。この辺りが一番よく使うビギナー中国語でした。
- Visit Japan Webの登録: 帰国時の準備になりますが、日本入国の際の税関申告書などは従来通り紙でもできますが、事前ウェブ登録が推奨されています。最近海外に行かれていない方は、ぜひ最新の手続きについて確認していってください。2024年中にも頻繁に変更がありました。
- 大きめのスーツケース: お土産を買ったり、慌てて洗濯物を詰めたりと、帰りの荷物は行きよりも膨らむ傾向があります。中国はいろいろな雑貨も安く買えたりしますし、中国のお土産のお菓子などはパッケージが立派でかさばる傾向が多いので、個人的には荷物にも少し余裕を持たせることをお勧めします!
- ホテルや航空券の写し(プリントアウト):これも念の為ですが、チェックインの際に言葉が通じなかったり、予約が見つからない際に、印刷してある予約確認表があると安心です。また、中国入国の際には、入国書類に帰路便の情報を書かなければならないのでその点でも印刷してあると確認が楽です(2025年2月には初めてオンライン申告も目撃しました)。
【まとめ】
中国への短期滞在は、事前にしっかりと準備を行うことで安心して出張や旅行を楽しむことができます。通信、決済、交通、法的手続きなど、ここで紹介したポイントを参考に余裕を持った準備を進めてください。初めての中国でも、準備が整っていればトラブルを避け、快適な滞在が実現できるはずです。
もし皆さんの経験や、この記事の内容を見て渡航した結果、役に立った、不足だったという経験がありましたら、フィードバック頂ければ、今後渡航する他の日本人の皆さんのお役にも立つと思いますので、よろしくお願いします。
免責事項
※なお、本記事に記載している法的アドバイスは最新の情報を確認しておりますが、現地の情勢は変動するため、渡航前にご自身で必ず公式機関の最新情報のご確認をお願いします。
※私の経験と知りうる範囲で最新の情報をもって作成していますが、情報のご利用はご自身の判断でお願いします。情報の利用に伴って発生した損害に対する責は負いかねます。
編集記録
- 2025.02.19: トイレに関する記載、ホテルや航空券の写しに関する記載を追記し、一部表記の字体を変更しました。